Soap-Labo
石けん研究所
石けんの起源は何時頃
人類初の石けんは、実は紀元前3000年頃にできたと言われています。
古代ローマ時代の初めごろ、サポー(Sapo)という丘の神殿で羊を焼いて神に供える風習がありました。
この羊を火であぶっているとき、したたり落ちた羊の脂肪が木の灰に混ざって石けんのようなものができたのが起源と言われています。その石けんがしみ込んだ土は汚れを落とす不思議な土として当時は珍重されたそうです。
石けんは油脂をアルカリ剤で煮るとできるのですが、この場合は熱々の木灰が脂を煮るアルカリ剤の役目を果たすことで石けんが出来たわけです。
ちなみに、英語で石けんを意味するソープ(soap)は、この丘の名前(Sapo)から取ったと言われています。
サポーの神殿で石けんが偶然できていた紀元前3000年代、メソポタミア(現在のイラク)でも石けんが作られていたと言われており、シュメール人が羊毛の洗浄と石けんの製法について粘土板にくさび形文字で記しています。
作り方は木灰にいろいろな油を混ぜて煮たというもので、塗り薬や織布の漂白洗浄に使われていたそうです。
同じ時期に別の場所で石けんが誕生していることに驚きますね。
石けん製造業の始まり
本格的な石けんの製造は、エスパニア(現在のスペイン)やイタリアで始まったと言われております。
8世紀ごろには家内工業として定着し、専門の石けん職人も生まれていたそうです。
このころの石けんは動物性脂肪と木灰から作った「軟石けん」と呼ばれる軟らかい石けんで、今の液体石けんに近く、匂いは動物の油から作られておりますのでかなり臭いものだったそうです。
12世紀ごろになると、地中海沿岸のオリーブ油と海藻灰を原料とした硬い石けん(硬石けん)が工業的に作られるようになりました。
この石けんは硬くて扱いやすく、オリーブ油が主原料となりますので、不快な臭いもなかったことから、たちまちヨーロッパで人気になりました。
この頃、石けん製造が盛んだったのはフランスのマルセイユやイタリアのサボナ、ベネチアなどになります。
ちなみに、サボナという地名はサボン(savon:フランス語で「石けん」)の語源といわれています。
17世紀には、地中海の物資の集積地であるマルセイユが石けん工業の中心地ともなりました。日本で古くから使われている「マルセル石けん」という名称は、マルセイユ石けんに由来するといわれています。
マルセイユ石けんの歴史
マルセイユ石けんは1000年以上もの昔からフランスで製造されています。ですが、初期のマルセイユ石けんと現在のマルセイユ石けんは時代とともに、鹸化法や原材料となる油脂の種類が変化してきたため別物になります。
17世紀には、マルセイユは高級石けんの産地として確固たる地位を確立しました。しかしその一方で、マルセイユの名を冠した粗悪品も出回るようになります。
それを憂えた当時の国王ルイ14世は1688年10月に「石けん製造が完璧であること」を願って次のような王令を発布しております。
王令の内容
【第1条】暑さにより石鹸の密度が損なわれる6、7、8月の石けん製造を禁止する。
【第2条】5月1日以前はオリーブの実が未熟すぎるため、最終搾りのオリーブ油を使用する。
【第3条】原料油脂は、オリーブ油以外の使用を禁止する。違反者には石けんを没収する罰則を課す。
これは石けん業界史上の重要文書といわれています。
この王令を守って作った石けんのみ「マルセイユ石けん(サボン・ド・マルセイユ)」と名乗ることを許され、これに違反した業者には厳しい処分が下されました。
また、オリーブ油以外の使用が禁じられた結果、生のオリーブ油が容易に手に入るプロバンス地方に石けん産業は集中してゆきました。
1855年のパリ万国博覧会では、パリ商工会議所出品の「マルセイユ石けん」に金メダルが授与されました。ところが、このマルセイユ石けんはオリーブオイルから作られたものではなく、ピーナッツ油とパーム油がペースの石けんでした。
このころになると、ルイ14世の王令通りでなくても「マルセイユ製法」で作られていればマルセイユ石けんを名乗ることができるようになっていたのです。
現在では24のフランス企業によって「マルセイユ方式」の家事用石けんが月平均3000トン以上作られています(1992年現在)。
そのうち、マルセイユ・プロバンス地方では、総生産量の30%以上を以下の5つの会社で占めています。
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マリウス・ファーブル・ジューン社
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シミオテクニック社
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サボヌリー・ランパル・バトゥ社
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サボヌリー・デュ・ミディ社
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サボヌリー・デュ・セライユ社
科学的分析法がまだなかった時代には、石けんの外観や手触り、におい、そして舌触りや味(!)で職人たちが仕上がりを調べたといわれています。
舌触りや味を確かめると言うことは、石けんの成分はつまり安全である証拠に繋がったのかもしれません。こうした職人技によって作り出されるマルセイユ石けんは、今日もなお多くの人を魅了しているのです。凄いことです。
石けんの普及
18世紀に入るとアルカリの需要が増えてきて、海藻や木から灰を作るだけでは追いつかなくなってきました。そこでフランスが懸賞金をかけて募った結果、1791年にフランス人科学者ルブランがアルカリ剤の合成に成功します。
これは海水から採った食塩から硫酸ソーダを作り、それに石灰石と石炭を混ぜて加熱して炭酸ソーダを取り出すというものです(ルブラン法)。石けん製造にはアルカリ剤が不可欠ですから、これによって石けんを大規模に生産することが可能になったのです。
その70年後、1861年にはベルギー人ソルベーによって、アンモニアソーダ法(ソルベー法)が発明されました。これは食塩水にアンモニアガスと炭酸ガスを吹きこんで重炭酸ソーダ(重曹)を作る方法です。ルブラン法よりも低コストで品質の高いソーダを大量に作れるので、世界中で採用されました。
その後1890年には、食塩水を電気分解してソーダを作る電解ソーダ法がドイツで工業化され、今ではこちらが世界の主流となっています。
このようにしてソーダが安く大量に作られるようになると、石けんの製造コストも下がって安く買えるようになります。そうなると庶民も気軽に石けんを使いはじめ、衛生状態が良くなってゆきました。
その結果、伝染病や皮膚病の発生が激減し、医学の進歩ともあいまって人々の平均寿命を一段と伸ばすことになったのです。石けんは医学の発展にも貢献していると言えますね。
石けんの日本デビュー
日本に初めて石けんが入ってきたのは16世紀と言われています。
種子島への鉄砲伝来と同じ時期であったと言われております。
このころの石けんは大変な貴重品で、手にすることのできたのは将軍や大名など限られた人たちだけと言われています。
洗浄剤というよりは、下剤などの薬用に使われたことのほうが多かったようですので口に入れても安全だったと思われます。
石けんを持ち込んだのはそのころ交易のあったポルトガルの船です。
ポルトガルでは石けんのことをシャボン(sabao)と言いますが、日本でも第二次世界大戦前くらいまでこの呼び名が使われました。
語源はフランス語のサボン(savon)と同じく、サボナという地名だと考えられています。
日本での石けん製造
昔の日本では、サポニンが含まれるムクロジの実やサイカチのさや、アルカリ性の灰汁などを使って洗濯をしていました。戦国時代にポルトガル船から石けんが伝わりましたが、その頃の石けんは大変なぜいたく品で庶民が気軽に買えるようなものではありませんでした。
国産の石けんが初めて売り出されたのは今から150年前の1873年(明治6年)。
堤磯右衛門が1本10銭で棒状の洗濯石けんを洗濯屋向けに販売したのです。しかし、その品質は舶来の石けんに比べて今ひとつでした。
その後1890年(明治23年)には、国内初のブランド石けん「花王石鹸」が発売になります。現在の花王石鹸創立者・長瀬富郎が製造販売したもので、桐箱に3個入って35銭。当時は米1升が6~9銭で買えましたから、それを考えると非常に高価な商品でした。
それでも明治後半になると価格も下がってきます。そこでようやく庶民も洗顔や入浴、洗濯などに石けんを使えるようになったのです。
洗剤の発明~家事労働の軽減にむけて
洗剤(合成洗剤)は、第一次世界大戦中、石けん製造の原料である油脂の不足を補う必要性からドイツで開発されました。
これは、硬水に弱い石けんの欠点を克服したものでしたが、その後さらに洗浄力、浸透力の改良がすすみました。そして、第二次世界大戦後、アメリカを中心に研究が進み、本格的に家庭用の工業製品として普及しはじめました。
日本では、1937年(昭和12年)、石けんでの洗濯が難しいウール製品用に中性洗剤が発売されました。
高度成長期に入った1950年代以降、日本でも洗剤が本格普及。電気洗濯機の普及とともに、固形石けんから、粉石けん、そして弱アルカリ性の洗剤へと、より便利に、さらに性能アップした製品が登場し、洗濯にかかる労力を激減する助けとなっていくのです。
界面活性剤について
界面活性剤は、その洗浄効果の高さから合成洗剤の主成分として長年用いられてきました。
また、石けんの歴史の中でも費用を安くできたことで一般人にも使用できるようになったことから
非常に重宝されてきたのも事実であります。
しかし、今日ではそのマイナス面(人体および環境に与えるマイナスの影響)が無視できないものであることが判ってきました。
体表:皮膚疾患への影響
「合成界面活性剤」と呼ばれる成分が、人体に毒性を もたらし、環境汚染の一因として重大な問題になっています。
まず、衣類(繊維)への残留性という大きな問題があります。
これはあまり知られておりませんが洗剤で洗うと、その後どんなにすすぎ回数を増やしても、
界面活性剤の一部は衣類繊維にピッタリと張り付いたまま残ってしまうのです。
洗剤で洗った衣類を身につけたとき、この残留界面活性剤が私たちの汗や皮脂に溶け出して色々な悪さをするのです。
肌が赤くなったり、かゆみを発生させたりしているのもこの成分によるものと言われています。
体内:生殖機能と内臓障害への影響
合成界面活性剤は、浸透力が強く、皮膚などからたやすく侵入し、血管内に入り、体内を巡り、蓄積されます。
特に肝臓や生殖器に悪影響を与えると論文等でも言われております。
※特に女性の場合は、子宮にも蓄積されることで、
家系に無いのにアトピー性皮膚炎・アレルギー・喘息の子供が生まれる原因になっています。
最近では、男性の精液中の精子の数の減少など精巣障害との関連性も指摘されています。
蛋白質変性作用があり内臓障害、皮膚障害を起こし、体内の酵素の働きを阻害し、
発ガン物質と出会うと相乗効果により発ガン率がぐんと上がることも指摘されております。
次世代への影響
界面活性剤は、女性の場合はその性質から胎盤を通過し、胎児や受精卵にも影響を与えるという研究もあります。
また、男性の場合には精子の減少を引き起こす可能性も指摘されています。
一般に販売されている台所用・洗濯用・浴室用洗剤などの合成洗剤も使うことで、手指などの皮膚から侵入してします。
自然環境への影響
これらの合成洗剤は、日々家庭排水として川や海に流れて行きます。
しかも合成界面活性剤は生分解されない(微生物によって分解されない)ため、下水処理施設でも分解されません。
私たちが毎日、合成洗剤や界面活性剤入りの石けん、シャンプー、コンディショナーなどを使いつづけるかぎり、
川や海にそのまま流され続けるのです。
これらは着実に自然の食物連鎖を壊し、生態系を狂わし、自然環境を壊しています。
そして、それがまた私たちの体内に入るという悪循環が繰り返されているのです。
洗浄力や保存、安価という魅力や効力とは逆に、かけがえのない自分の肌や体が侵され
自然環境も徐々にむしばまれて
近い未来では大問題になっているかもしれません。